kobaです。
この本も書店での「プラっと買い」です。
京都出張で帰りの新幹線に乗る前にプラット寄った京都ヨドバシの大垣書店で買った『人は、なぜ他人を許せないのか』についてのreviewです。
基本データ
- 著者…中野信子(なかののぶこ)
- 出版社…㈱アスコム
- 価格…本体1200円+税
- ページ数…223P
- 初版…2020年1月29日
著者プロフィール
中野信子(なかののぶこ)
1975年東京都生まれ。
脳科学者、医学博士、認知科学者。東京大学工学部応用化学科卒業。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。フランス国立研究所ニューロスピンに博士研究員として勤務後、帰国。脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行う。科学の視点から人間社会で起こりうる現象及び人物を読み解く語り口に定評がある。現在、東日本国際大学教授。著書に『世界で活躍する脳科学者が教える!世界で通用する人がいつもやっていること』『脳はなんで気持ちいいことをやめられないの?』(アスコム)『サイコパス』『不倫』(文芸春秋)、『シャーデンフロイデ』(幻冬舎)『キレる!』(小学館)など多数。また、テレビコメンテーターとしても活躍中。
※巻末より転記
本の概要
第一章から第四章までの本編に「はじめに」と「あとがき」を加えた六部構成になっています。
<各章の概略>
- 第一章…「ネット時代の『正義』-他人をつるし上げる悦び」
- 第二章…「日本社会の特殊性と『正義』の関係」
- 第三章…「なぜ、人は人を許せなくなってしまうのか」
- 第四章…「『正義中毒』から自分を解放する」
<本の仕様>
カバーはコート紙を使い、ツルっとしてすこし高級感もあります。フォントは明朝ベースで和書らしい読みやすさがあります。
作品の背景
中野氏はコラムニストのジェーン・スーさん(コラムニスト)という方から『中野さんの本には解決策が書かれていないね』と言われたそうです。これに対しては国学者の平田篤胤の法華経批評のことばを引用し、答えがないものをああでもない、こうでもない、と議論するその時間こそが大切だと言われています。そしてあとがきでは
「私が答えそのものをお伝えしてしまったら(そもそも答えを持っていませんが)、あなたが答えを考えることの喜びを奪ってしまうことにもなります」
と書かれています。
つまり、即効薬を求める姿勢こそ正しさを求めることであり、ひいては「善と善の闘い」を生んでしまう。それこそが『他人を許せない』ことにつながるのだという論調で本書を締めくくられています。
この本の最強おすすめポイント
さすが科学者!と言いたくなるほど、実験データと論文などから丁寧に考察してあります。
それでいて堅さ難しさがありません。
芸能人のスキャンダルやSNSの炎上など、身近な「許せないバナシ」を適宜使いながら書いてあります。
そして本書のキーワードとなるのが
正義中毒
という言葉です。
そもそも芸能人のスキャンダルは自分にとっては何の利害もないのに何故叩くのか。叩くことによってどうなるのか。
中野氏によれば、スキャンダルや不祥事を叩く『正義の鉄槌』を下すと、脳の中の快楽中枢が刺激され、快楽物質であるドーパミンが放出されるそうです。
これにハマると、罰する対象を常に探し求め、決して他人を許せない状態になってしまうそうです。これをして中野氏は
「こうした状態を、私は正義に溺れてしまった中毒状態、いわば『正義中毒』と呼ぼうと思います」
と書きます。
つまり人が人を許せないのは「気持ちがいい」からなのですね。
最後に
正義中毒という言葉が気になり書店で手に取ったのですが、予想を大きく上回る面白さでした。
テレビやネットてでは芸能人のスキャンダル、政治家の不祥事の話などが後を絶ちません。これは世の中が間違っているのではなく、単に私たちが「快楽物質」を出したいから、つまり
気持ちよくなりたいから
なのかもしれません。
つまり世の中が間違っているのではなく、私たちが間違っている。許せない対象を作り出すことで自らの快楽を満たしている。これは恐ろしいことです。
仏教では、地獄は死んでから行くところではなく「この世で私が生み出すもの」という教えがあります。
この正義中毒など、まさにそうではないでしょうか。
先般も〇ンジャッシュの渡●さんの不倫報道がありました。
内容は聞けば聞くほどたしかに酷いものではあります。
しかし、『あんなに可愛い奥さんがいるのにどうして』というのは、美人でなければいいのかという矛盾も生じそうだし、大事なのはスキャンダルではなくコロナの正確な情報と収束です。
また、石〇純●さんの泥酔姿のニュースもそうです。
何か、自粛のストレスを他人に向けているだけのような気がするのは私だけでしょうか。
人を許せない、と感じた時には立ち止まることも必要かもしれません。
こんな世相にも何か一つの考えるキッカケをくれる一冊です。
お時間あれば、ぜひご一読を。
koba
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